Y-19(2024)田んぼだより

 今年もY-19では地元小学5年生と体験学習を行います。6月25日に学校に行き、パワーポイントを使って1時間、「田んぼの学校」の講義を行いました。毎年少しずつバージョンアップしていて、いろいろ調べたりする中で、自分も知らなかったことを発見したりします。温暖化により、ウンカ被害が出やすくなったことや、遅く植えることがウンカ対策になることもそうです。そして、おそらく多くの方が(当の農家自身も)まだ知らないだろうと思うのが、化学肥料によるマイクロプラスチックの問題です。簡単に水に溶け出してしまう化学肥料をゆっくり長く効かせるために、小さなプラスチックのカプセルに包み込む技術が一般化しています。そしてこれを田んぼで使えば、最終的に海に流れ込み、その流出量はなんと、全体の15%を占めていると言われています!

 基本的な米作りのこと、我が家の自然栽培について、そして5年生の子供たちどころか大人にも難しいこと・知らないこともあえてそのまま子供たちに伝えています。どうして自然栽培でお米が出来るのか、どうして普通の農家さんは農薬や化学肥料を使い、それが環境にどれほど影響を与えているか、熱量を持って伝えることが大事だと思っています。

 田植えは、6月27日からスタートしたのですが、あいにく子供たちもやってくるこの日は朝から雨となってしまいました。2014年には、雨の中、カッパを着て子供たちに田植えをしてもらったこともありますが、コロナのパンデミックがあって以来、ムリをさせるのは難しくなっています。雨の場合は、見学をしてもらう予定になっていました。
 午前中、私一人でもち米を植え、午後から5年生がやって来ました。雨は小降りで、降ったりやんだりしている中、まずは私が苗を植えるところを見学してもらいました。そうしているうちに、子供たちも先生も、「雨も小降りだし、せっかくだから少し田植えをさせてもらおう。」ということになりました。約30分、10列程度、わいわい言いながら田植えしてもらいました。まだやり足りない子供たちがたくさんいて、水路で足を洗いながら、結局びしょ濡れになる子供もいました。 

(2024.6.27 撮影。 水路は斜面になっていて急流だから気をつけて!と言っても平気で子供たちは遊び回ってました。) 

 この日は、妻が大分市内へお野菜の配達に行っていて間に合わない可能性があるので、長女の応援を頼みました。そしてもし可能であればと言うことで、頼んでいたSくんも応援に来てくれました。Sくんは、近所のハウスでベビーリーフの栽培をしながら、豊後大野市内の品質の良いお野菜をいろんなところに卸してくれていて、我が家もとてもお世話になっている人です。
 子供たちが帰った後、配達から帰った妻も加え、4人で田植えを行いました。さすがに大人4人なので、かなり植えることが出来ました。午後5時過ぎには、妻と長女は帰りましたが、Sくんは遅くまで付き合ってくれて、8から9割方植え終わりました。本当にありがとう!

 7月2日に1回目の縦方向を除草を行い、7月9日には、5年生に除草作業に来てもらいました。この日は雲は出てますが良い天気となりました。

(2024.7.9 撮影。)

 田植えの時に一度田んぼに入ったはずですが、また改めてわいわいと悲鳴?と歓声?をあげながら田んぼに入ってくれました。
 人数が多いので、除草機ではなく、手作業で稲の周りの泥をぐるぐるとかき混ぜながら距離の短い横手方向に進んでもらいます。田植えと違って腰を曲げたままの状態になるので、ちょっと大変です。実際には、水に手を突っ込んで進んでいるだけだったり、歩いているだけだったりしますが、まだまだ生えてきた草は小さいので、歩くだけでも結構な除草効果があります。クオリティーは低くても人海戦術であることがこの時期の田んぼ除草にはありがたいことです。

 子供たちは、水中の生物にもとても興味を示します。(作業に飽きてきたり、疲れてきたりするからかもしれませんが)イモリやオタマジャクシ、コオイムシなどを見つけ、すくい取ったりしながらわーわー言っています。そして、3年ほど前から大量に増えてきたジャンボタニシもあちこちで見つけ拾い上げたりしています。ジャンボタニシについては、あのピンク色の卵もあちこちで見つけ、私に声をかけてきます。大量にいるにもかかわらず、我が家の田んぼでは全く稲を食べられていませんが、稲を食べると言われている外来生物だよと話をします。

(2024.7.24 撮影。稲の周り、水中の中もほとんど草が見えずとてもきれいです!)

 子供たちとの除草の後も、1週間おきごとに除草機で作業を行いました。今年は、除草作業が非常にうまくいきましたが、それ以上に田んぼがきれいだと感じています。稲以外に草が全く見えません。考えるに、このきれいさは、ジャンボタニシが水中の低い草や藻を食べてくれているからではないか。ジャンボタニシにとって稲よりも美味しい草があり、それを食べているから、稲の食害が全くないのではないか。
 小さいうちに草を取り除くことが出来ると、草の種が出来ないので、他から持ち込まない限り年々草が減っていくことになります。将来、稲以外の草が非常に少ない状況になっても、本当に稲が食べられずにすむのか、ずっと観察を続けていくしかありません。

(2024.7.30 撮影。 水中にもたくさんの生物がいますが、稲の葉に目を向けると、あちこちにヤゴの抜け殻が。)

 7月に入ると、本当に赤トンボがたくさん飛ぶようになりました。田んぼの除草が非常にうまくいっているので、稲の観察をするのと同時に、水中の生き物、稲周辺の生き物に今まで以上に目が行くようになりました。7月下旬には、軽トラで移動中も、フロントガラスにたくさんぶつかってしまいそうなくらい、大量のトンボが飛んでいます。そのトンボは、田んぼの中で生まれ、稲に登って、成虫になるようで、あちこちに抜け殻を見つけました。

(2024.7.30 撮影。 たくさんトンボが飛んでます。

 私の妻は、畑で草取りなどの作業をしていると、しょっちゅう顔周辺を虫に刺されて帰ってきます。最近、虫除けに効果があるという、オニヤンマの模型?のバッチを見つけ、帽子に付けています。その効果なのか、今年は今のところ虫に刺されていないようです。
 オニヤンマに限らず、トンボは肉食性で、飛翔している虫などを食べるようです。稲の周りを飛んでいるたくさんのトンボは、稲をしっかりと守ってくれているんですね。その他にも、クモやカエルや、シロサキ、アオサギたちが田んぼを守ってくれています。

(2024.8.13 撮影。 相変わらず、草が少なくきれいな田んぼです。 中央にイトトンボがいるのが分かりますか?)

 最初に田植えしたY-06で出穂し、稲の花が開花しているのを確認しましたが、二番目のY-19でも出穂が始まっていました。相変わらず、草が少なくきれいな田んぼで、このまま元気に育ってくれればと思います。 

(2024.8.17 撮影)

(2024.8.20 撮影。 稲穂がはっきりと見えるようになり、開花が始まりました。)

(2024.8.25 撮影。稲穂が少しずつ重くなり、頭がたれ始めました。風でさわさわと揺れています。)

 8月末に台風がやって来ましたが、我が家の田んぼには被害が出ることなく通過してくれました。その後も順調に稲が育っています。
 9月に入り、他の2枚の田んぼでは、次第にヒエが顔を出してきましたが、この田んぼではほとんど顔を出していません。長年5年生たちと除草していること、そしてたぶん、ジャンボタニシが小さな草を食べてくれているからではないかと感じています。
 Y-19の田んぼを私が耕作し始めたのは、3枚の田んぼの内一番最後。自然栽培での米作りで、当初は他の2枚に比べて稲の生育が小さい、弱いなと感じていました。自然栽培なので、肥料や堆肥を導入しませんが、他の2枚では昔蒔いた緑肥のレンゲやヘアリーベッチのこぼれ種が毎年花を咲かせ、それをすき込むので、結果として栄養分が豊富な田んぼになっているように思います。Y-19はそれがほとんどなく、カラスノエンドウなど雑多な草をすき込むだけなので、栄養分が少なかったのだと思います。今年は好天に恵まれたこともあって(暑すぎかもしれませんが)、他の2枚と遜色ない出来映えになっています。そもそも自然栽培なので、田んぼの状態や気象条件に合わせ、身の丈に合った生育をしてくれていると思います。今年は豊作になりそうな予感がします。 

(2024.9.11 撮影。)